OptoEleMechの日記

主に時計、電卓、カメラの話題

HAMILTON Khaki Field Automatic(ハミルトン・カーキ・フィールド・オート)の修理

分解されたまま放置されていたハミルトン・カーキ・フィールド・オートの修理をようやく実施しました。

オークションで入手したこの時計はかなりひどい状態でした。分解して状態を確認したところまでの記事はこちらです。

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3番車の軸が折れていて、ケースは傷だらけ、短針の根元が文字盤に接触して、文字盤に傷が入っているというものでした。

部品を注文して届いたときの記事がこちら。

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新しい3番車を組み込んで、確認していきます。

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購入した3番車

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組み立てたところ

この時点で、うまく回るか確認しますが、歯車の回転がかなり重いみたいです。

そして、あるところで回らなくなってしまいます。もう一度分解してよく見ると、2番車の歯車が欠けています。分解したときには、軸のことばかり気にしていて、歯車を確認していませんでした・・・。

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2番車の歯車が!

ただ、この2番車はETA2801から流用できたので、何とかなりました。

気を取り直して、組み立てても、歯車の回転はかなり重いようです。おそらく前のオーナーが、軸が入っていない状態で、無理やりネジを閉めたので、輪列受けが曲がってしまっているようです。全ての軸の隙間を見ながら、少しずつ真っすぐに板を曲げて調整して、問題なく歯車が軽く回るようになったところで、ネジを閉めます。

この調整だけでかなりの時間を要しました。

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香箱も取り付けて、歯車がうまく回るか確認

一つずつ、問題なく動くかを確認しながら組み立てて、とりあえず全ての歯車を組み終えて、少しゼンマイを巻いて、テンプが動き出すことを確認しました。

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完成

念のため、ローターを取り付けて、ゼンマイが巻かれるかをチェックしておきます。

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自動巻きのローターを取り付けたところ

問題なさそうなので、歩度調整をします。調整は素直に行きました。5秒から10秒ぐらいプラス目に調整しておきます。緩急針やヒゲ持ちを少しでも調整した後は、安定するまでかなり時間がかかるので、しばらく放置して、歩度が安定していることを確認しておきます。ハック機能で秒針を止めて、また動かすと、時間が経って元の歩度になることも確認しておきます。

調整して、数十秒間だけ見てOKとして、ケースに入れたりして、しばらく時間が経ってから再度確認すると、歩度が変わっていることがあります。

調整した直後の少し部分的にストレスがかかった状態から、バランスの取れた状態に移行するまでは、少し時間がかかります。ただ、一度バランスの取れた状態になっていると強い衝撃とかを与えない限り、常にその状態を維持しています。

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歩度調整

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傷だらけのケースと風防

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かなりひどい状態です

とりあえず、ダイヤモンドのラッピングシート、サンドペーパー等を使い、できるだけ傷を消して、元々がヘアライン加工のところはヘアライン加工で仕上げて、ポリッシュ仕上げだったとことはポリッシュします。

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マスキングテープでヘアライン部分を保護

傷が深くて、かなり削り込んでも深いものは消えません。

あまり形状を変化させるものどうかと思うので、とりあえず細かい傷が消えたところで終了とします。ぱっと見はかなりきれいになっていましたが、光を当ててみると深い傷が残りまくっていますね。

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なんとかこのあたりまで

風防もダイヤモンドシートで、全面を削ってから、徐々に番手を上げて行って、酸化セリウムで磨いたのですが、こちらも傷が深すぎて、取りきるのは困難でした。

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ムーブメントを組み込んで完成

まぁ、元の状態はこちらなので、かなり良くなったんじゃないでしょうか?

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元の状態

30mmのダブルドーム風防は、eBayで香港の出品者が格安で売っていたので、とりあえず注文しておきました。

風防が到着したら、風防交換と同時に、もう一度ベゼル部を傷が完全に消えるまで研磨しようと思います。

時計は組み立ててから4時間経ちましたが、今のところ正常に動作しているようです。

ちなみに、文字盤と短針が干渉していたのは、ムーブメントと文字盤の間に入るスペーサが、しっかり嵌っていなかったためだと思われます。文字盤を取り付けて横から見るとスペーサがズレてうまく入らないことがありました。でも、その状態で針を無理やり押し込んで、文字盤と干渉しているのを気にしないというのも大胆ですね。