OptoEleMechの日記

主に時計、電卓、カメラの話題

軍用ディスポーザブル・ウォッチ BENRUS MIL-W-46374のオーバーホール

オークションで、BENRUSの使い捨て軍用時計を落札しました。

数秒で秒針が止まってしまうので、不動品ということでした。

 時計に関する投稿はしてこなかったのですが、ネットではあまり情報がなく、今回、試行錯誤したので、どのようにメンテナンスすればよいのかを記録に残しておこうと思います。

 そもそも使い捨てのプラスティック製ボディの時計なので、修理やオーバーホールはしないのが前提となっています。

 

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オークションで落札したBENRUS MIL-W-46374

1969年5月製造のものです。

まず、アクリル製のドーム風防を風防外しを用いて、慎重に外します。

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外れました。リューズの周りにサビの粉が飛び散っていますね。

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そして、細いドライバーで、文字盤の隙間をゆっくり持ち上げます。太いドライバーは隙間に入らないので、無理やりやるとプラスティックボディに傷が付きます。

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文字盤が浮いたら、ムーブメントを上に力を加えながら、リューズをゆっくり回すとリューズのかみ合わせが外れ、ムーブメントが外れます。突然外れるので、力を入れすぎてムーブメントを飛ばさないように気を付けてください。

これで、ムーブメントを取り出すことができました。

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ムーブメントはBELFORTE 7石 MODEL 11K1Fです。BELFORTEはBENRUSの廉価版ブランドです。

リューズはかなりサビていたので、ビザーWでサビを溶かします。

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で、こうなります。

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風防の大きな傷は、1000番程度の紙ヤスリで落として、ピカールで磨きます。

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ここからは、通常のムーブメントのオーバーホールの手順で、全ての部品を分解し、超音波洗浄を実施し、再度組み立てます。Hamiltonの軍用時計に使われているムーブメントETA2801-2のマニュアルを参考に、特定の部品はエピラム液で処理します。f:id:OptoEleMech:20200430161620j:plain

香箱も分解し、ゼンマイの掃除もしたのですが、ゼンマイ巻き取り機のサイズがどれも合いませんでした。ということで、仕方ないので1部品を旋盤で自作し、何とかゼンマイを巻き取り香箱を元に戻します。

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巻き取ったゼンマイ

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香箱の蓋を閉めて元通りにします。

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文字盤を取り付けます。

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ここで、タイムグラファーで、動作チェックしながら調整。

ん~、いくら調整しても姿勢を少し変えるだけで、歩度が大きく変化します。ルビー軸受けは7石しか使っていないので、結構、すり減ってガタがあるので、ある程度のところで妥協します。

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分針と秒針の先端は文字盤に合わせて曲げられています。

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リューズのホゾに溝を慎重に合わせて、ムーブメントをケースに入れ込みます。

真っ白だったケースは、プラスティック保護材のARMOR ALL(アーマオール)を何度も刷り込んで、できるだけ復活させました。

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これで完成です。

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1966年8月製のMIL-W-46374と並べてみると、プラスティックの色がかなり違いますね。

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ほぼ、1日動かしていますが、止まることもなく、1分以内のズレで動いています。

50年以上前の使い捨て時計ですが、使い捨てせずに使い続けることができそうです。