音叉式の時計のBULOVA Accutronの修理は部品が届くまでお預け状態なので、今回は、フランスのLIPの電磁テンプ式時計"la montre du général(将軍の時計)"の修理を行いました。
日本のLIPのページにはあまり情報がないのですが、将軍の時計の将軍というのは、シャルル・ド・ゴール将軍のことみたいです。元々はR27というムーブメントのものみたいですが、こちらはおそらくもっと後に発売されたもので、ムーブメントはR148だと思います。
ドゴールの他、アメリカのアイゼンハワー大統領、クリントン大統領にフランス政府が寄贈し、プレジデントウォッチ(La Montre des Présidents:大統領の時計)と呼ばれるようになったみたいです。
ゼンマイの代わりに電磁石の力でテンプを回し続けるので、電気式の時計の中でも、電磁テンプ式と区分されています。
細い電気の端子を電磁石の力で回転してきたテンプに取り付けられた石が押すことによって、電磁石の電源が切れて、ヒゲゼンマイの力で戻され、また電磁石のスイッチが入り・・・、と繰り返し動き続けます。
電池を入れると電磁石は働くようですが、そこで静止したままになってしまいます。
裏蓋を開けてルーペで一つ一つ見ていくと、電気の端子が1本、変なところに行ってしまっています。
更に分解して見やすくします。
右下から2本出ている端子が2股に分かれて、右側の端子は常に接触した状態になっています。強い衝撃を与えても、なかなか乗り越えて行かなさそうな場所にまで行ってしまっています。
ということで、右側の端子を、気を付けながら元の位置に戻します。
フランス語の修理マニュアルの絵を見ると、本当は先端がピッタリ重なるぐらいが正しい位置らしいのですが、曲げ過ぎたら大変なので、これで動くか試してみます。
静止画だとよくわかりませんが、テンプが勢いよく回り出して、往復運動を始めました。
ということで、修理完了です。一応、精度的にも問題なく動いています。
ということで、数年前に発売されたヒストリカル・シリーズのGDG(おそらくドゴール将軍の時計 : la montre du général de GaulleのGDG?)と一緒に写真を撮ってみました。
GDGは39mmのクオーツモデルです。今、調べてみたら35mmのモデルもあったみたいです。余っていて投げ売り状態だったので、サイズ違いがあるのは気付きませんでした。
ELECTRONICと書いてありますが、電磁テンプ式ではなく、クオーツです。
自動巻きモデルもあるのですが、やはりここは元の電気時計の復刻なので、ELECTRONICの文字がAUTOMATICでは魅力が半減です。R148は、18,000振動なので、秒針は1秒間に5刻みします。
復刻のクオーツGDGは1秒刻みのステップ運針なので動きが違いすぎます。これがクオーツでも1秒間を4回刻むスイープ運針のものを載せていたら大絶賛だったのですが・・・。
ちなみにLIPは、ドーフィン・サービスウォッチも持っています。
これは、1964年から1966年に実在した時計の復刻版です。当時、時計を修理やオーバーホールに出した際に、預けた時計が戻ってくるまでの間、代わりにお客さんに貸し出していた時計を再現したものです。自動車を車検等に出した時の代車のようなものですね。
文字盤には「時間をお貸しします」という文言がフランス語で書かれています。