OptoEleMechの日記

主に時計、電卓、カメラの話題

加工の名称

少し前に、G-SHOCK GMW-B5000MB-1JFの記事を書きました。

CASIO G-SHOCK GMW-B5000MB-1JF

optoelemech.hatenablog.com

この時計の説明を見ると、「ベゼルとバンドにホーニング加工を多用しつつ、側面にはヘアライン仕上げを採用。バンドの斜面やビス、ボタンなどはミラー仕上げを施した後に、全体にブラックIP処理を施すことで、仕上げの違いが生み出す黒の風合いを楽しめるデザインとなっています。」とのことです。

ベゼルとバンドにホーニング加工を多用・・・。自分のよく知っているホーニング加工は、砥石のついた工具を回転させ、円筒の内面を研削して仕上げる加工方法なのですが、どうもそれとは違うようです。元々英語のhoneから来ている、honing processというのは、honeが砥石で研ぐという意味です。機械加工の分野では、自動車のシリンダー等の円筒の内面を回転する砥石で磨くことを指す場合が多いと思います。

色々調べていると、指輪加工の分野ではホーニング加工というのは、艶消しを行う工程のことを指すようです。カシオの「ホーニング加工」は、どうもこちらから来ているような気がします。指輪の加工の解説を見ていると「ホーニング=つや消し」という表現が多く出てきます。

では、指輪のホーニング加工とは具体的にどのような工程なのかを調べると「細かい粒を空気の力で吹き付け、微細な凹凸を付ける」というように書いてあります。これって、いわゆるブラスト加工のことですね。

どうもこのあたりが曖昧になっているところのようです。ホーニング加工は一般的には、上に書いたように砥石を使った内面加工を指すのが一般的で、砥石の代わりに砥粒と液体を吹き付けて加工する、液体ホーニング加工というものがあります。液体ホーニングは、ウェットブラストと同義語とされているようです。

元々は、砥石で磨く(hone)ところからスタートして、液体の砥粒を使うものを、液体ホーニングと呼ぶようになり、粒子を吹き付けてツヤが消えてしまうので、つや消し加工のことを指すようになったという感じでしょうか?

大元はツヤを消すというより、磨く加工のことなのですが・・・。

個人的には、光学加工の分野の仕事をしているので、一般機械加工の分野で言う「研磨」は、光学の分野では研磨とは言いません。

一般機械加工の分野では、砥石を使って削る(研削)することを「磨く」と言うことが多いのです。平面研削盤の加工を「研磨加工」という人が多いのですが、光学加工の分野では、研削と研磨は区別されます。

簡単に言うと、研削加工は、砥石で削るので、形状を積極的に創成する加工であり、研磨加工は表面の凹凸(粗さ)を小さく滑らかにする加工のことを指します。まぁ、真面目に考えると、どこからが形状でどこからが粗さなのかという問題にぶつかるので、空間周波数でおおよそ分類することになるのですが、話が深くなり過ぎるのでこのあたりでやめておきます。

以前から、僕は時計のケースの仕上げで「ザラツ研磨」という表現が好きではないと何度か書いてきました。そもそも時計以外の精密加工の分野の人たちにザラツ研磨で仕上げて欲しいと言っても全く通じないと思います。

ザラツ研磨の中で最上のものは錫板を当てて磨くものだそうですが、超々精密の分野の人にとっては「それってラップ加工だよね」となってしまいます。本当の鏡面と呼ぶためには、ラップ後にポリッシュが必要なのです。

 

ザラツ研磨が登場する過去の記事

更にカシオの説明の中に「ブラックIP処理」というのが、ありますが、IPというのはイオンプレーティングのことで、物理蒸着法(Physical Vapor Deposition)の中の一つの手法です。このあたりも、名前の付け方が色々あり過ぎるので、明確な分類が難しい場合があります。

このような、専門用語的なものを多用して、いかにもすごい技術を使っていますというように見せるのは、どうしても好きにはなれません。