OptoEleMechの日記

主に時計、電卓、カメラの話題

Cameraholics Vol.5

Cameraholics Vol.5がライカNoctiluxの特集でした。色々役に立つ情報もあり、比較的、楽しめる内容でした。Cameraholicsという本は初めて読みました。

写真家のエッセイのようなものもたくさんあるのですが、今一つな内容もたくさん含まれていて、記事のクオリティにバラツキがあるように感じました。

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Cameraholics Vol.5

絵画、写真、美術等は、好みや時代背景によって良い悪いも変わるので、個人的にはあまり評論を読むのは好きではありません。

長年カメラのレンズを開発してきた技術者としては、どうしても技術的な部分につい注目しがちになってしまいます。

今回、P.73に「このレンズ、初期型は研削非球面、後期がガラスモールド非球面を使用したとあるが、」という記載があります。

1966年に発売された、「NOCTILUX-M 50mm f/1.2 ASPH.」は、1966年-1967年の初期型とそれ以降の1976年までの後期型(セカンドロット?)に分類されるのらしいのですが、分類される理由は、製造方法が変わったということみたいです。初期型は人の手による手磨きと書いているものが多くあります。では、後期型がガラスモールドだというのは初耳ですね。

いちおうレンズ業界としては、ガラスモールド非球面が採用された35mm用交換レンズとしては、1985年発売の「Canon New FD35-105mm F3.5-4.5」ということになっていると思います。つまり、1976年に生産終了しているNOCTILUX-M 50mm f/1.2 ASPH.にガラスモールド非球面が採用されているということはないと思われます。

そもそも量産品としてガラスモールド非球面レンズが世界初採用されたカメラは、1982年のKodak DISK4000なので、1976年より前にガラスモールドレンズが採用されていたということはないと思います。

現在でもライカ非球面レンズOEMを除けば、研削研磨非球面を採用しているはずです。

ただ多くの人は、「ガラスモールド(成形品)だから、1つずつ製作している研削研磨より精度が悪いが、安価にできる」と誤解しています。

生産数量が少なければ、研削研磨の方が安価に生産できますし、精度もどこまで追い込むかによっては、研削研磨の方がバラツキが出やすくなったりもします。

手研磨、機械研磨にしても、機械だから精度を出せるというわけではないのです、機械研磨で精度が安定して出せるところまで、研磨装置を調整するよりも手で磨いた方が早いなんてことは日常茶飯事で、ガラスモールド用の金型は手磨きで仕上げているところの方が多いと思います。

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