OptoEleMechの日記

主に時計、電卓、カメラの話題

トランジスタ技術 2023年1月号(700号)

トランジスタ技術2023年1月号には、創刊号の復刻版が付録として付いてきます。1964年10月号です。広告も含めて忠実に再現してあり、非常に興味深く読むことができます。

トランジスタ技術2023年1月号

別冊付録1は「国民的トランジスタ2SC1815とは」という冊子で、創刊号の復刻版は別冊付録2です。表紙をめくると、シャープのコンペットの広告が載っています。

復刻版

「電子式卓上計算機はシャープ」というキャッチフレーズを使っていて、早川電機・シャープ電機となっています。まだこの頃は早川電機工業株式会社の時代ですね。シャープ電機は営業部門が独立した会社です。1970年にシャープ株式会社に社名を変更しています。

元々は東京で創業した会社ですが、創業者の早川徳次が「早川式繰出鉛筆」を発明し販売しました。これが後に社名の由来にもなったシャープ・ペンシルです。ただ、シャープ・ペンシル自体はアメリカで発明されたもので、キーランという会社がエバーシャープという商標で販売していたものが元になっているようです。

1923年に関東大震災で工場を全て焼失し、残った機材や事業そのものを大阪の取引先に譲渡し、シャープペンシルの技術指導を終えた1924年に大阪で早川金属工業研究所として再開します。

現在の本社は大阪府堺市堺区匠町1番地ですが、2016年に鴻海精密工業股份有限公司と提携し、創業の場所である大阪市阿倍野区長池町22−22にあった本社の土地を売却しました。2023年にニトリがオープンするみたいです。

僕の実家はこの近くなので、よく前を通っていました。

小学校の社会科見学ではシャープの八尾事業所で冷蔵庫の製造ラインを見学したことを今でも覚えています。「アラスカ」という商品名の冷蔵庫だったと思います。八尾事業所も2019年に工場としての稼働は終了しました。事業所は今でも残っているようです。

工場の航空写真が写っている下敷きを記念品としてもらったような気がします。事業所は道を挟んで斜め向かいの土地の2か所に分かれていて、上から見ると2つの土地が斜めに並んでいて「ひょうたん」のように見えるので、ひょうたん工場と呼ばれているという説明を受けたことが印象深く記憶に残っています。

さて、トランジスタ技術の別冊付録に話を戻します。創刊号なので、「トランジスタはこうして作られる」という記事が載っています。これは大変貴重な資料ですね。製造工程が記載されているので、材料さえ入手できれば自分でも作ることが出来そうな気がしてきます。

トランジスタの作り方

シャープコンペットの基本的な仕組みが解説されています。やはり動作原理とかの説明を読むのは楽しいですね。

コンペットの紹介

最近の日本の技術雑誌は、出来上がっているものの使い方の説明がほとんどで、動作原理やソフトウェア・アルゴリズムを詳しく説明しているものは、あまり見かけません。40歳代ぐらいの人でも、既に出来上がったものをただ使うだけしか出来ない人が多い気がします。

ソフトウェアもライブラリを使うだけで、機能が足りなければライブラリそのものを作るという発想がそもそもないのを見ていると、日本の技術レベルの衰弱を感じます。

かつてプログラミングの雑誌として「Cマガジン」という非常に良い書籍がありました。2006年4月号が最終だったみたいですが、コンパイラの動作や、アルゴリズム、OS周辺のプログラミング等、かなり奥深い内容を掲載していました。

現在は「日経ソフトウェア」が初心者向けのプログラミング雑誌として何とか生き残っていますが、月刊から隔月刊となり、最近はPythonの特集ばかりとなっています。最新号の特集の「絶対知っておくべきアルゴリズム」は、ちょっと内容が雑過ぎて、これを読んで何になるのだろうと疑問になりました。

カメラの雑誌も「写真工業」というカメラの技術的な部分に焦点を当てた雑誌がありましたが、2008年12月号で休刊になりました。

トランジスタ技術」は休刊にならないで欲しいのですが、厳しそうな気がします。